キャラクターもののグッズ売り場をフラフラ見ていたら、とあるノンフィクション系のエッセイマンガのキャラクターグッズが売っていた。そのキャラクター自体結構好きであったため、購入するかどうかは悩んだが、ここで一つ考えたことがある。
このキャラクターはノンフィクションのキャラクターである。つまり、モデルが現実にいる。グッズが大量に作られ、大量の店に陳列され、大量の人物の手に渡る。グッズを分身と考えると、自分の大量の分身が世間に拡がることになる。
このとき、モデルとなった本人はグッズを見てどう思うのだろうか。「分身の術、本体はここなり!」みたいな感じなのだろうか。
自分の分身が世界中に拡がって、自分の前を歩く人が自分の分身を身に着けている。なかなか体験できる人は少ないだろうな。
本来の趣旨から外れるけど、全人類が分身を作って、総キャラクター時代になったら少し面白そうだと思った。
「ノルウェーに住む○○さんが推しで、グッズが最近になってやっと日本に入ってきたよ、東京で限定販売だってさ」みたいな話題が四方八方に飛び交うんだろうな。
…冷静に考えて、これインフルエンサー界隈とかVtuber界隈で発生している事象だったわ。自分の自分が置かれた環境よりも外に押し出したいと強く思う人はすでに分身を作って世界に輸出してたわ。ビジネスって素早いね。
話変わって。今朝の目覚めは最悪だった。鈴虫がうるさくて、捕まえた。左耳がかゆくなったが耳かきが近くに無かったため、指でカリカリかこうと思い、左手を耳に入れた。指先に先ほど捕まえた鈴虫が移動していたらしく、そのまま左耳の奥に鈴虫が入り込んでしまった。鼓膜近くでカサカサ羽が動き、自分の耳の内側の触覚が刺激される。鈴虫の鳴き声が一番近くで鳴り響く。あまりの気持ち悪さに絶叫した。その瞬間僕は目が覚めた。
思わず僕は耳に指を突っ込んで、虫がいないか確認した。指先には何の感覚もないのに、夢の中の触覚がまだ刺激されている。耳の奥でサワサワと何かが動いている感じがする。しかし、音はしない。絶叫しながら綿棒や耳かきでひたすらに耳をかいた。数分後、完全に夢であったと解釈し、平静を取り戻した。
次の関門。歯を磨くために鏡を見る。もしかしたら僕自身が虫になってしまったのではないかと思った。中学生のころ読んだカフカの『変身』がフラッシュバックしていたのだ。カフカが亡くなってから今年でちょうど100年。最近カフカの話題が身の回りで多かったことも影響しているだろう。そんなことを曇りがかった脳ミソでぼんやりと考えながら鏡を見た。勿論人型であった。問題ない。
その後、用事があって本屋に行った。夏の文庫本フェアでカフカの『変身』が中学生当時と変わらぬ表紙で目立つ場所に置いてあった。流石に驚いた。ここまで1つの物語に振り回される日があるのか。今朝の夢はこの伏線か。100年後の読者からの仕返しとして『分身』という拙い小説でも書いて彼の墓に捧げに行ってやろうか。訳者がいないと、あっちの世界で「日本語わかりません、読めません」って言われて終わりなんだろうな。カフカ、日本語を勉強してくれ。
何なら今も少し左耳がかゆいが、朝の夢とは無関係と思いたい。