くらうんぼーい

僕ピエロ。子供たちを笑わせるのが大好き。今までのピエロのメイクは少し怖かったから、幼稚園児くらいの子でもわかりやすいくらい笑顔のメイクを施してあるのが特徴さ。今日もたくさん子供たちを笑顔にしちゃうぞー。

僕ピエロ。僕を雇ってくれている会社から通達が来たよ。どうやら老人ホームに行って欲しいらしい。お年寄りの方々を笑わせられるか不安だなぁ。まあ、頑張ってみよう。
僕ピエロ。結果は散々だったよ。お孫さんがいる方とかは微笑みながら見てくれていたけど、やっぱり僕はご老人向けのネタは持ち合わせていないみたい。でも、ワガママは言ってられないね。お年寄り向けのネタを開発して頑張らなきゃ。
僕ピエロ。全然ダメだ。色々試してみたけどダメだ。どんなに頑張ってもダメだ。最近は僕がステージに立つだけで罵声が飛んでくる。「ピエロを出さずに、その分演歌歌手の時間を伸ばせ!」だってさ。本人の前で言うかよ、それ。
僕ピエロ。自信が無くなった。人を楽しませるピエロが泣いちゃってるんだもん。僕はピエロ失格だね。なんで会社は僕を老人ホームに派遣したのだろう。僕の精神をポッキリ折りたかったのかな。僕はただ皆を楽しませたかっただけなのに。

僕ピエロ。また会社から通達が来たよ。次の派遣先は幼稚園かなぁ。通達を開くよ。…別の老人ホーム。ちょっと不安だなぁ。
僕ピエロ。前の老人ホームと結果は変わらなかったよ。何をやっても僕は幼児向けがメインなんだろうね。
僕ピエロ。もう仕事に行きたくないよ。膝抱えて泣いちゃうよ。もう疲れたよ。泣いても何も起きないよ。今日もピエロネタをやるしかないよ。漫談とか演歌とか、老人向けの鉄板ネタは禁止されているよ。こんなに頑張っているのに。笑ってくれなきゃ意味ないよ。

僕ピエロ。もうピエロを辞めるよ。子供たちを笑わせる方法は他にもあると思ったよ。老人ホームを笑顔にするのはそれが得意な人にお任せするよ。自宅でメイクを落とすよ。顔のパーツも全部落ちちゃったよ。見事にノッペラボウだね。僕は誰だっけ?

僕○○○。子供たちを笑わせに保育所や学校へ赴くよ。…あれ?子供向けのネタを忘れちゃったな。子供たちは何をすると笑ってくれるんだっけ?前までは立っているだけでも「ピエロさんだー!」って近寄ってきてくれたのだけれど。今は「ノッペラボウだ!化け物だ!」って悲鳴を上げながらみんな逃げていく。石も投げられる。…つらいね。

僕○○○。得意と自負していた子供向けのネタも忘れちゃった。残ったのはウケない老人向けのネタ。僕は何のために生きているんだっけ?最初は、辛くて悲しい人にやさしく寄り添ってその人が笑うまで隣にいる、そんな人に憧れたんだよな。でもミスマッチで空回って荒んで化け物になって…。

僕○○○。もう寝るね。せめて夢の中では皆が笑ってくれているといいな。



ピエロと○○○が憐れんだ目でこちらを見た。

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