AIロボット新登場

※この物語はフィクションです。

今日は待ちに待ったAIロボットの発売日だ。その姿や機能は発売日の今日までシークレット。一般的には一切公開されていない。
「AIロボット、これだけで消費者には十分すぎるインパクトがあり、これ以上の広告費は無駄になる」これが販売社の売り文句だ。
勿論金額はかなり高めであるが、このガジェット好きで知られる俺は、絶対に買わなければならない。最先端技術を目の当たりにし、最高の感動とAIロボットの真相のネタバレを踏まないために。
近くの販売店では、前日からの待機を禁止している。そのため、俺は午前0時に並び始めた。深夜の眠気に耐え、もう間もなくオープンだ。値段が高く、性能が一切オープンでないため、そこまでの行列はできていないが、俺を含めて10名程度は並んでいる。
店長らしき人物がおもむろに入り口のシャッターを開ける。「おはようございます。本日発売のAIロボット売り場は店の一番奥になります。まずは一人ひとり10分程度性能を見ていただきまして、買うか買わないかを決めていただきます。そのため、先頭の方以外のお客様につきましては、もうしばらくお待ちいただきます。大変申し訳ございません。」
一人ひとりにしか公開しないとは、ものすごく変な売り方だと思ったが、テレビカメラがズカズカ入ってきて映像でも撮られたら一気にネタバレになってしまう。これの対策だろうと自分を納得させた。
何はともあれ、俺は先頭だ。一番最初にAIロボットを体験できるのだ。
店内に入り、目的のブースにたどり着いた。カーテンとベニヤ板で周囲とは隔絶されている。俺は中に入った。中には2人の店員。片方は眼鏡をかけていて普通体形の中年。片方は裸眼なのか眼鏡をかけておらず、20代くらいの細身長身。いわゆるイケメンっぽい。
「いらっしゃいませ。おはようございます。」「来店、感謝。」
2人が挨拶をしてくる。なるほど、片方は人間の店員で、もう片方がAIロボットということなのだろうか。
「AIロボットの発売日ということで見に来たんだけど、これがAIロボットですか?」
「そうです。あなたはAIロボットを初めてみた一般消費者です。」「初見、衝撃。」
「人型とは驚いた。ちなみに何ができるロボットなの?」
「何でもできます。買い物、選択、掃除等の家事から、創作まで。主人の頼みは基本的に聞きます。50ヶ国語に対応しているため、海外旅行でも重宝しますよ。」眼鏡の店員がロボットダンスのような動きをしながら説明する。
「炊事、得意。」…どうやら助詞助動詞等は難しいのかもしれない。
「なんだか会話が難しそうだね」思わず言ってしまった。
「そんなことはございません。会話パターンも数万種類学習させているため、最適な会話ができるようプログラムされております。万が一会話がかみ合わないときは、深層学習モードをオンにすることで、主人の周囲の環境に合わせた動きを実現させることができますよ。」
「機能、最高。」
「動力は電池ですか?」
「充電式です。あらかじめ時間を設定しておけば、自動で充電ケーブルに接続し、いわゆる睡眠モードになります。」
「睡眠、人間、同類。」
なるほど、お休みタイマーとおはようタイマーをセットすることで、より人間らしく動くのか。
カーテンの外側から先ほどの店長らしき人の声。「そろそろお時間です。」
ふむ。とりあえずいろいろできる人型ロボットのようだし、一番最初に購入した人物ということで、メディアに売り込めば多少のコストは回収できるだろう。特に話を聞いて不満な点はなかったし、最先端技術が自宅にやってくる興奮のほうが何倍も勝る。
「購入します!!」
「お買い上げありがとうございます!それではレジにご案内します!」僕と眼鏡の店員さんはレジへ向かう。
カーテンで仕切られた部屋を出ると、店長がこちらに一礼し、次の客をカーテンの中へ案内していた。
レジにいた店員さんにも、「一番最初のご主人ですね、おめでとうございます!」と言われながら会計を済ませた。なんだか大きなことを成し遂げたみたいだ。きっと店を出ると取材陣が俺を取り囲み、色々質問されるのだろう。そんなことを思いながらクレジットカードを財布にしまい込んだ。
…おかしい。会計を済ませたというのに、商品が出てこない。こういう大きな商品は大体バックヤードから在庫を持ってきて、会計と同時に引き渡し、ではないのか?「あの、商品は後日発送か何かなのですか?」
「…?そのようなサービスも行っておりますが、せっかくですから一緒に帰ったほうがよろしいのではないですか?」レジ員が首をかしげる。
「ん?ああ、在庫は一つだけで、商品を全員が見終わったら持って帰っていいっていうことですかね?それならしばらく外に出てますので、全員が見終わったらこの番号に電話ください。」俺は電話番号を書いた紙をレジ員に渡す。
「…はあ…?」レジ員は首を傾げつつも紙を受け取った。さて、外に出て取材でも受けてくるか。「AIロボットは人型だった!家事全般何でもできる!50ヶ国語対応で、語学にも役立つかもしれない!」みたいな感じで受け答えすればウケが良いだろうか。
俺は出口を目指す。後ろから眼鏡をかけた中年店員がついてくる。大きな買い物をしたから、出口まで見送ってくれるのだろうか。一応挨拶くらいはしておこうか。
「今日はありがとうございました。おかげさまで人生史上最高の買い物ができました。AIロボット楽しみにしてますね。」
「ご期待に応えられるように精一杯尽力します。ご主人様。」

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